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フュージョン ストラテジー
ーリアルタイムデータとAIが切り拓く産業の未来

  • 著者:ビジャイ・ゴビンダラジャン/ベンカット・ベンカトラマン
  • 訳者:NTTデータ・コンサルティング・イニシアティブ
  • ISBN:9784492558478
  • 価格:3,080円(税込)
  • 発行:東洋経済新報社版
  • 発行日:2025年4月16日

製造業における従来の企業戦略は、製品主体の単一業界内での戦略で、工場での生産にもとづく品質向上とコスト低減に注力し、購買時点で自社製品をどうしたら選んでもらえるかを重視してきました。そして事業の成長は、工場設備などの物理的制約のなかで段階的に進むものとして考えられてきました。経営者は長きにわたり、ビジネス成功のために、コスト削減、差異化、集中戦略という3つの包括的戦略のなかから、自社の業界構造に最も適したものを選ぶ必要があると教えられてきました。そしてデジタル技術は、特定の事業でのコスト削減や新しいサービスを提供する、単なるツールとして位置づけられてきました。
その結果、デジタル化の取り組みとして、既存製品の延長線上にセンサー等を追加し、自社製品単独の稼働ログなどによるデータグラフを獲得したものの、提供できる顧客価値は限定的で、既存のハードウェアをそのまま単体で売るという事業から脱却できていない状態が続いているのです。
本書「フュージョンストラテジー」では、製品の利用顧客のデータを活用することで、業界の枠を超えてサービスの統合などを行い、顧客に差別化したソリューションを届けることが主眼に置かれています。私たちはこのような潮流を、「タンジブルエコノミー(物理的な製品が価値を作り出す経済)」と「コネクテッド・インタンジブルエコノミー(物理的に形がない製品・サービスが価値を作り出す経済)」が融合する新たな経済と捉えています。タンジブルな製品を作り、提供する企業は、コネクテッド・インタンジブルな製品やサービスを取り込み、ビジネスモデルを変革し、新たなサービスを創出する必要があります。高品質かつ低価格な製品で競争する製品起点ではなく、顧客の真の課題を解決することを起点に、他社と連携したエコシステムで実現することが重要と述べられています。

本書の特長

本書は新たな製造業の流れとして重要なデジタル技術である『データグラフ』と『アルゴリズムの発展』が大きな変化を生んでおり製品、顧客、利用状況などの相互関係、データのつながり、可視化・分析・予測とレコメンドが実施できる戦略実行が大きな変化を生んでいると分析しています。参考となる海外事例や具体的なアプローチを提示する内容となっていますが製造業だけでなく、今後は環境関連データ、画像データといったIoTやセンサーデータと掛け合わせて活用が期待されるデジタル化領域の戦略定義には、どの業界にも役立つフレームワークや考え方が提供されています。また日本企業における現在の取り組み状況、今後への課題などについても事例を基に解説した内容も含んでいます。

目次

  • 第1部鋼鉄とシリコンが出会うとき

    • 第1章産業の過去は序章に過ぎない
    • 第2章大手企業を制するデジタル新興企業
    • 第3章反撃に転じる産業界大手
    • 第4章4つの戦略展開領域
  • 第2部価値のベクトル

    • 第5章優れた機械の戦い
    • 第6章目覚ましい結果を求める競争
    • 第7章スマートシステムの対決
    • 第8章カスタムソリューションの激突
  • 第3部フュージョンフロンティアの獲得

    • 第9章フュージョンの原則と実践

著者について

ビジャイ・ゴビンダラジャン
ダートマス大学のタック経営大学院特別教授。戦略とイノベーション分野に関する世界的権威として知られている。ハーバード経営大学院マービン・バウワー・フェローや、INSEAD(仏フォンテンブロー)とインド経営大学院アーメダバード校にて客員教授も務めた。『ビジネス・ウィーク』誌が選ぶ「企業エグゼクティブ教育におけるビジネススクール教授」のトップ10や『フォーブス』誌の格付けによる「最も尊敬を集めるエグゼクティブコーチ」のトップ5に選出されるなど米国を代表する経営思想家の一人。ブルームバーグCEOフォーラム、ワールド・ビジネス・フォーラム、TED、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)などの基調講演者も務めている。代表的著書に『リバース・イノベーション』(ダイヤモンド社、2012年)がある。
ベンカット・ベンカトラマン
ボストン大学クエストロム経営大学院教授。専門は情報システムと戦略・イノベーション。デジタル戦略の世界的権威として知られている。マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院やロンドン・ビジネス・スクールにおいても戦略分野の教鞭を執っていた。博士論文はアカデミー・オブ・マネジメントのA・T・カーニー賞を受賞。グーグル・スカラーにおいて、経営学とデジタル戦略の分野で引用件数が最も高い研究者の一人であり、その数は5万件を超える。IBM、エリクソン、GE、アマゾン、マッキンゼー、ソニーなど世界のトップ企業に対して、コンサルティング、プレゼンテーション、ワークショップなどを開催。代表的著書に『The Digital Matrix: New Rules for Business Transformation through Technology』がある。

翻訳者について

NTTデータグループでコンサルティング業務を行う、株式会社NTTデータ内の組織、株式会社NTTデータ経営研究所、株式会社クニエ、株式会社NTTデータ数理システムの4社の事業連携。フォーサイト起点の社会イノベーションを共通コンセプトとし、政府機関を中心とした公共分野から、金融、小売、製造、サービスなどの幅広い業界に対しコンサルティングを行っている。将来のあるべき姿の研究から、政策提言、コンソーシアム運営、企業の戦略立案、業務改革支援など、さまざまな社会課題や経営課題の解決に向け2700名を超える各領域のプロフェッショナルが、専門性とノウハウを結集しながらコンサルティングサービスを提供している。編著書に『フォーサイト起点の社会イノベーション』(日本経済新聞出版、2024年)、訳書に『デジタル・トランスフォーメーション・ロードマップ』(東洋経済新報社、2024年)、『生成AI活用の最前線』(東洋経済新報社、2025年)がある。
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