2025.07.11
産業データ連携がもたらす未来
(1)企業間から業界全体へ
鈴木 裕一郎

本連載ではデータ連携の意義・目的をはじめ、現在取り組みが進むデータ連携の具体的なユースケースや推進方法、未来展望などを解説します。
※本記事は、日刊工業新聞の週次連載「産業データ連携がもたらす未来」の第1回(2025年4月15日)の内容を転載しています。
持続的な競争優位を展望
デジタル技術の進展により、データが企業の競争力を左右する時代が訪れている。例えば製造業では、サプライチェーン(供給網)全体の最適化や製品ライフサイクルを通じた価値向上が求められるが、多くの企業は依然として自 社内での部分最適にとどまっている。
単独企業の努力だけでは解決できない課題が増える中、こうした状況を打破するには、企業間のデータ連携が不可欠であり、今後の製造業の変革において極めて重要な要素となる。特定の企業間の取り組みを業界全体へ波及することで、日本の製造業のデジタル変革(DX)を底上げする可能性を秘めており、今後はさらに、業界を越えたデータの共有が競争力の源泉となっていく。
このような連携の必要性は、具体的なユースケースを通じてより鮮明になる。例えば、欧州ではカーボンフットプリント(CFP)やデジタルプロダクトパスポート(DPP)に関する規制を通じて、データ連携の仕組みが実現へと向かいつつある。加えて、生産需給調整やS―BOM(ソフトウエア部品表)の共有、エネルギーの効率的な運用 といった地域・業界レベルの課題に対し、データ連携による解決の道が開かれている。これらの事例は、法令対応のためだけでなく、むしろ競争優位の獲得を目指した戦略的な連携の必要性を示唆している。
データ連携がもたらす価値を最大化するためには、まず「ユースケース検討」を行い、「ビジネスプラン策定」「仕組み構築」と順を追って検討を進め、さらにユースケースごとに異なる価値の発揮ポイントを見極めることが欠 かせない。また、ガバナンスやトラストといった主要な技術要素への理解を深めておくことも重要だ。
カテナXをはじめ、さまざまなユースケースを実現するデータ連携の仕組みが生まれる中、日本企業がこの変革の流れを自らの成長機会として捉え、グローバル競争力を強化するためのアクションを積極的に起こしていくことが求められている。
クニエでは、企業間でのデータの連携・活用を通じて、持続的な競争優位につながる新たなビジネス価値の創出と、業務変革の実現を支援している。本連載では「産業データ連携がもたらす未来」をテーマに、全体を五つのパートに分け、データ連携の重要性やその実践方法を詳しく解説する。

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