2025.08.26

産業データ連携がもたらす未来

(5)製造マッチング

鶴見 泰輔 

本連載では、データ連携の意義・目的をはじめ、現在取り組みが進むデータ連携の具体的なユースケースや推進方法、未来展望などを解説します。
※本記事は、日刊工業新聞の週次連載「産業データ連携がもたらす未来」の第5回(2025年5月20日)の内容を転載しています。

外注先探しが効率的に

これまで製造業がデータ連携に取り組む意義と目的を取り上げた。ここからは数回に分けて具体的なユースケースを紹介していく。今回は既に推進されつつある多くのユースケースが当てはまる二つの型について説明する。
 
一つ目はサプライチェーン(SC、供給網)上の企業間で部品や製品単位の情報をつなぎ、トレーサビリティー(履歴)を管理するパターンである。真っ先に思い浮かぶのは、製品カーボンフットプリント(CFP)や化学物質情報など、規制対応を目的としたデータ連携だ。
 
それ以外にも部品の不具合情報を連携し、SC上の影響範囲を即時に把握する、または部品単位の稼働情報などについて、新品時だけでなく使用中やリユース、リファービッシュ(再整備)の状況までをも一貫して把握しながら、これら部品の整備・再利用に関する可否判断に役立てるなどといったユースケースも実現されつつある。今後は規制対応のためだけでなく、品質や資源循環などに関わる情報に連携項目が変化、拡張されていくだろう。
 
二つ目は、企業や消費者との間で、需要と供給をマッチングさせるパターンである。調達品の需給最適化など欧州で進みつつあるケースのうち、製造業にとって特に注目度、影響度の高いケースとして、製品の製造そのものをサービスとして提供する事業モデルのマニュファクチャリング・アズ・ア・サービス(MaaS)がある。特定の製品を製造するニーズに対して、対応可能な設備の空き稼働をマッチングすべく、企業間でのデータ連携を行うケースである。
 
文字通りの意味では単なる外注先探しでしかないが、「自社の技術情報を外注先に渡さず」に、「製造設備のメーカーを問わず」製造依頼できるとしたらどうだろうか。試作や特注品など機微な情報を有しがちな小ロット生産がより気軽にかつ効率的に行えたり、地理的に好条件の場所を選択できるようになったりして、これまでにない企業との連携や協業が進み、バリューチェーンに変革をもたらす可能性を秘めている。このような仕組みの実現に向けた検討が、欧州の機械加工領域から始まっている。
 
データ連携のユースケースは、上記二つの型もしくはこれらの組み合わせによるものと整理できる。これらの型に無理やり当てはめる必要はないが、自社にとって価値あるデータ連携ユースケースを思案する上での参考になるだろう。

鶴見 泰輔

重工・造船、機械・装置産業担当

マネージャー

※担当領域および役職は、公開日現在の情報です。

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