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2019.03.08
デジタル時代の先進ロジスティクスとは?
「日本型ロジスティクス4.0」発刊記念セミナー開催レポート
日本のロジスティクスは今、EC活況による消費者行動の多様化、労働力の不足と高齢化など、事業運営に影響を及ぼす複数の課題に直面しています。先進的な一部の企業では既に、物流のロジスティクス戦略化に舵を切り、庫内オペレーションの効率化をはじめ、物流機能の本質的な変革に取り組み始めています。本セミナーでは、株式会社MonotaRO執行役物流部門長 吉野宏樹氏および、株式会社クニエ ロジスティクス担当リーダー前田賢二が、最先端の庫内自動化ソリューションの適用事例を紹介するとともに、ビジネスの変革と成長を支えるために、今後、企業は物流をどう変革し、ロジスティクスとして戦略化すべきか、そのロードマップと具体的な手法を説明しました。
MonotaROは、切削工具、ベアリングなど工業用間接資材のB2Bインターネット販売で年率20%を超える成長を続けています。1,800万点の在庫を管理しつつ、在庫商品へのオーダーの当日出荷*を実現し続けており、3年間で物流量が2倍になる急激な成長の中で、ロジスティクス戦略の成否が企業の成功を左右する状況にあります。
大型ディストリビューションセンターへの設備投資と大量雇用、庫内作業の自動化・省人化、物流ネットワーク最適化など、MonotaROでは、調達から輸配送までの各プロセスで、データに基づく最適化を行っています。特に2017年にオープンした笠間ディストリビューションセンターには、小型無人搬送ロボットRacrewを導入し、従来方式のディストリビューションセンターの2倍の効率を実現しています。
「コストの圧縮だけを目指すのでなく、別の観点で、ロジスティクスを戦略化することが重要」という同社の考えから、ロボットと人間のハイブリッドな作業デザインを実現し、人の作業をより楽にして、ミスが起こりにくいオペレーションを行っています。社内にIT要員はもちろん、データサイエンティストを抱え、ロボティクスを高度化すると同時に現場の状況を的確にオペレーションに組み込み、戦略の実行だけでなく、戦略へのインプットを行っているのです。
* 在庫商品に関しては、15:00までの注文を当日に出荷している
「日本のロジスティクスが抱える課題、これを一言で表すと、バリューチェーンの上流から、その最下流にある物流への要求が一方向になっていること」と、クニエのロジスティクス担当のリーダー前田は言い切ります。
「物流プロセスの中でも特にデリバリーは、プロセスの中の唯一の顧客接点であり、カスタマーエクスペリエンスの観点から、より大きな価値をつくることが可能な領域なのです。」
ところが実際は、デリバリーは再配達や返品などの個別の対応に疲弊し、そこから顧客インサイトを見出すに至っていません。ロジスティクスの戦略化に向けては、それを担う人員が、社外のネットワークや顧客と繋がり、物流現場から見える、隠れた顧客の期待をビジネスの企画や運営にフィードバックすることが重要なのです。
また、デリバリーは民間企業が個別に最適化するのが困難な領域でもあります。「ロジスティクスの中で、物流センター業務はロジスティクス3.xから一気に4.0に進化し得るのですが、課題は、集荷・発送から配送の領域。ここを労働集約型からインテリジェントなサービスに変革する、それにはデリバリーの社会インフラの熟成、法規制の緩和、商習慣の適正化が重要です。」
前田は、私見ですがと断ったうえで、「既存のインフラにだけ依存するのでなく、ロジスティクス4.0の物流プラットフォームを自らつくることが、ECや製造業にとって、一つの解になるのでは」と提言しています。
講演後、参加者からもデリバリーネットワークの課題やその解決策について質問があり、両氏は異口同音に物流プラットフォームのあり方やその構想の一端を披露しました。