2020.03.16

RPAから始めるスマート自治体に向けた転換

デジタル化による業務効率化で、より良い住民サービス・福祉の維持を

槙 茂 

定型業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)が業務効率化の強力なツールとして注目されている。既に導入が進む民間企業に続き、自治体でも広がりを見せ始めた。RPAは、人間の仕事を代替する効率化ツールとして高い効果を上げており、ややもすると“人減らし”の取り組みと捉えられる。果たして目的はそうなのか?その取り組みの本質を紐解く。

※当コンテンツは、雑誌Wedge 2019年4月号掲載のPR記事を再構成したものです。

RPA導入によってもたらされた定型業務負担80%軽減、その狙い

つくば市は2018年1月、全国の自治体に先駆けて、RPA導入に向けた実証実験を、クニエを含むNTTデータグループと共同で行った。定型かつ膨大な作業が発生する税務など複数の業務でRPAを活用したところ、入力・登録、検索・照会などの作業負担を約80%軽減することができたという。その後、RPA導入は全国の大規模自治体を中心に広がり、2019年1月時点の導入率は、都道府県レベルで約30%、指定都市では45%にのぼる。

今後は労働人口の減少は加速し、民間でも自治体でも、業務の見直し、効率化は不可欠である。その一方で、RPA導入による効率化は、現有の雇用に影響があるものではないかと懸念する声があるのも事実だ。しかし、実際にはこれは“人減らし”に結びつくものではない。RPAは労働時間の制限もなく、ミスなく定義した通りに動く。これを活用することで職員は膨大な定型業務から解放され、その時間を住民により良いサービスを提供するために使うことができる。それをトップが理解をし、推進していくことが重要だ。

多様化・複雑化する住民のニーズにどう対応をしていくか

RPAは、大きなシステム改修を必要とせず、目の前の業務からスモールスタートで取り組めるのが特長である。導入にあたっては、これまでマニュアル化や可視化されていなかった業務の棚卸と可視化を行い、業務量や難易度、作業特性等を評価したうえで、RPA導入効果を検証し、進めることが必要である。この過程で業務が可視化されることで、属人的になっていた業務の必要性の見直しや最適化が進むといった副次効果も期待できる。
しかし、部門の自主性に任せてしまうと、これが一部の取り組みに終わってしまう恐れがある。部分的な活用にとどまらず、全体的な改革を視野にトップダウンで組織横断プロジェクトを設立したうえで戦略的に実行していくことが肝要である。

一方、RPAをより有効に活用するには情報のデジタル化が前提となるため、紙ベースでの運用がまだ多い自治体では、紙情報の電子化も大胆に進める必要がある。年齢層に関係なく公平にサービスを提供する必要がある自治体において、デジタル化は難しいのではないかという声がある。

確かに高齢者にとってパソコンやタブレットなどの操作は難しいかもしれない。しかし、デジタル化と自動化により業務が効率化するからこそ、同じ職員数でも住民とのコミュニケーションの時間を増やすことができる。人口がますます減少していくと同時に、人々のニーズは多様化・複雑化しており、業務量は増えていく傾向にある。民間はデジタライゼーションによって効率化はもとより、新ビジネスの創出を目指している。自治体もデジタル化によりスマート自治体への転換を図り、住民サービスの向上や、職員の働き方改革に本格的に取り組む時に来ているのだ。
RPA導入にあたっては、RPAによる効率化が期待できる業務の選定や効果検証に加え、組織全体での導入・継続運用、さらにはRPAも含めたデジタルトランスフォーメーションの推進を視野に入れ、取り組むことが望ましい。限られた労働力でいかに生産性を高めるかは、企業であれ自治体であれ、喫緊の課題である。自治体が本来担うべき役割をよりよく果たし、サービスの質を高め、同時に働く人が仕事にやりがいを見出す、業務と働き方のパラダイムシフトには、RPA導入を契機とした改革の取り組みがもはや不可欠である。

槙 茂

公共分野担当

ディレクター

※担当領域および役職は、公開日現在の情報です。

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