QUNIE

2020.03.25

デジタルトランスフォーメーション(DX)への第一歩 ~DX推進編~

【第1回】変革に必要な真のデジタル技術活用とは

デジタル技術の本質的価値の引き出し方

井出 昌浩 

昨今は、空前のデジタルブームである。AI会社の社長が主人公の仮面ライダーゼロワンをはじめ、テレビキャラクターもデジタルを意識した設定・ストーリーとなっており、子ども世界でもデジタルが身近なものとして取り入れられている。
ビジネスの社会では、以前から活用してきたITもデジタルと言われており、いったい何がデジタルなのか混乱している人も少なくないだろう。デジタルについて、本質的な理解を深めるための議論が必要だ。
しかしながら、課題解決や価値創造を求められているビジネスにおいて、最初に重要な論点となるのが、デジタルがもたらす価値や変革とは何なのか、その価値をどのようにすれば自社として最大限に引き出せるのか、という点である。デジタル技術を実装すること自体が目的となり、その真の価値を引き出してビジネス適用できていないケースも見られるのが現状だ。
本連載では、デジタル技術(情報通信技術に加えて、Internet of Things(IoT)、人工知能(AI)などのコンピューターや通信技術の応用技術)が、我々のビジネス社会が抱える潜在的な課題をどのように解決するのか、そして、各企業・業界・社会の発展のためにどのような着眼点でデジタル技術をとらえるのか、どのような観点・留意点をもって、POC(Proof of Concept、概念実証)・POV(Proof Of Value、導入前検証)疲れとならずにビジネス成果を獲得していくか、などについて事例をまじえて解説していく。

デジタル技術活用の価値を引き出すには

デジタル技術活用の枠組み、デジタル技術の位置づけ

 

デジタル技術のもたらすインパクトを否定する人はいないだろう。デジタル技術の活用によって、自社の単なる業務効率化、高度化だけなく、ビジネスモデルのイノベーション、自社が属する業界の破壊(ディスラプション)が、今も起きている。実際に企業の現場では、スマート〇〇、〇〇Techなど、デジタル技術を活用した取り組みが数多くあり、そのことからも、ビジネスの成長・発展のためにデジタル技術が必要不可欠であることは明白だ。

では、なぜデジタル技術の活用が一筋縄ではいかないのか。それは、デジタル技術は直線的ではなく、指数関数的な進化・発展をするからだ。直線的な進化・発展であれば、現在・過去の知見をベースに比較的容易に先を見通すことができるが、指数関数的である場合、今までの価値観や制約ではなかなか見通すことができず、技術の進化やもたらす価値の増大スピードに我々がついていけなくなってしまう。それらの価値観や制約を変革するのが、コンサルタントの役割だ。

指数関数的に進化・発展し続けるデジタル技術を、多様な手段を駆使して特徴や価値を理解しながらビジネスに活用することが、デジタルの価値を継続的に引き出すことにつながる。さらに、それをビジネス価値に変換してこそ、自社・業界にインパクトを与えることにつながるのだ。そのためには、その取り組みを担う人材、つまりデジタル人材が欠かせないものとなる。

デジタル技術進化は、指数関数的に進化。だから対応が難しい

デジタル人材はどこで確保すべきか?育成対象はどこまでか?

本連載では、デジタル人材を以下のように定義する。

  • さまざまな技術の特徴・価値を理解して、複合的にビジネスモデルや業務プロセスに実装することで、その技術の価値を引き出すことができる人材
  • その結果として、自社あるいは顧客に価値を提供できる人材

このようなデジタル人材は、「自社に」必要なのだろうか。

企業のビジネスモデルによって必要となるデジタル人材の数は変わるが、どの企業もデジタル化、デジタルトランスフォーメーション、デジタル・ディスラプションに直面しており、デジタル人材を全く必要としていないという企業は存在しないはずだ。

そうしたデジタルに関する取り組みを行う際の基盤となるものは何なのか。筆者は、人材や思考・文化が重要要素だと考えている。したがって、自社の方向性や目指す姿をよく理解した人材が、デジタル技術を活用して継続的にそれらを体現していくことこそが、成功の要諦と言える。

現在の社会では、デジタル人材そのものの絶対数が少ない。そのため、自社のビジネス戦略のもと、中長期的な計画を策定し、求めるデジタル人材へと持続的な育成をしていくべきだ。まして、デジタル技術の進化のスピード、その結果としてもたらす価値の拡大を考えると、デジタルスキルは特定の部門や階層だけが有すればよいスキルではないと言える。デジタルスキルの領域の幅・深さは異なるとしても、多くの人材がそれらのデジタルスキルを有し、今まで解決できなかった課題の解決、新しいビジネスモデルの創出につなげるべきだ。

そのためにも、自社のビジネス戦略と照らし合わせて、求めるデジタル人材のタイプとスキルの定義、計画的かつ段階的な育成体系を設計し、実行していくべきではないだろうか。それがないと、ブームにのった一過性の人材育成に陥ってしまう。

クニエのデジタル人材育成の進め方

 

デジタル人材育成のステップ

次々と押し寄せるデジタル技術に振り回されないために

最近までAIブームで振り回されていたと思ったら、新しい移動通信システムの5G(第5世代移動通信システム)・6G(第6世代移動通信システム)の話題が出たり、未来のコンピューターとして量子コンピューターの話題が出たり、高付加価値製品生産技術として3Dプリンタ・4Dプリンタの話題が出たりと、次々と新しいデジタル技術が誕生・進化し、企業での適用事例がメディアでも取り上げられている。さまざまなデジタル技術に振り回されて、いったい何について学習・調査をすればいいか混乱してはいないだろうか。

デジタル技術の価値変換の構造

そこで重要なことは、デジタル技術を技術視点でとらえるのでなく、ビジネス視点で本質的に理解することだ。そのためには、単なる技術の特徴を理解するだけでは不十分だ。ビジネスでの活用をデザインすることで、デジタル技術の価値を引き出し、その結果としてビジネス価値が創出される。つまり、技術価値をビジネス価値に変換する方法を考えることが肝要となる。こうした取り組みには、外部機関を含めたセンターオブエクセレンス機能とうまく連携することも有効だろう。

クニエラボ/デジタルラボは、先進デジタル技術のビジネス活用の方法論の開発、
エコシステムの調査研究・開発を実行し、その成果を企業や社会に提供

 

今後の連載では、各デジタル技術の理論や特徴の解説ではなく、我々コンサルタントの実践体験をもとに、ビジネス視点で、そもそも各デジタル技術、エマージング技術(実用化が期待される先端技術)、ディープテック(SDGsや根深い課題を解決する技術とその取り組み)をどのようにとらえていくべきなのかについて論考を展開していく。さらに、その上で企業において各デジタル技術の活用時に陥りがちな罠、その罠の回避方法、デジタル技術の価値を引き出してビジネスに適用していくためのコツなどを解説していく。

井出 昌浩

ITマネジメント/デジタルラボ担当

マネージングディレクター

メーカーにてITを活用した生産技術の研究開発業務に従事後、SIerを経てNTTデータビジネスコンサルティング(現QUNIE)入社。ビッグデータ、アナリティクス、AI、IoT等のデジタルテクノロジーに精通し、デジタルテクノロジーの活用、デジタルビジネスモデルの開発、データサイエンティスト/デジタル人材育成など多岐にわたるプロジェクトをリードする。また、研究開発機関であるQUNIEラボ/デジタルラボをリードする。博士(数理情報学)、東京農工大非常勤講師、複数大学の客員研究員を兼ねる。

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